面会交流の拒否で慰謝料500万を認めた判例

社会の基底的集団として、家族は全人格的に付き合うものであって、人はこうした家庭でおよそ成人に至るまでの長期間育成されるものであり、成人して出ていく社会にも社会的法則や倫理を遵守するとかの父性的原理に基くものや思いやりなど他人と共感して生活するなど母性的原理に基くものの双方を必要とし、未成熟の子に対する父親としての役割、母親としての役割を考慮すれば、つぎの時代を担う人間を育成する場として親権は親の権利性をそう強調して論ずべきものではなく、また、子の福祉の観点からその義務性をそう軽々しく論ずべきものではなく、父と母の共同して親権を行うことが最も望ましいのはいうまでもないところである。

(中略)

別居後の調停等の席上、原告から一郎を遠ざけようとする被告の態度(前記一2(二)、(三)、(四))は、社会人として成長した暁には人格として備わっていなくてはならない二つの特性、すなわち、人間の母性原理の他、父性原理を一郎自身が学習すべき絶好の機会を被告自らが摘み取っている態度というべく、決して讃められた態度ではない。
 子供は産まれたときから二親とは別個独立の人格を有し、その者固有の精神的世界を有し、固有の人生を歩むというべく、決して、母親たる被告の所有物ではないのである。

(中略)

被告が原告に対して一郎との面接交渉を拒否したことは、親権が停止されているとはいえ、原告の親としての愛情に基く自然の権利を、子たる一郎の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害したということかできるのであって、前項で検討した諸事情を考慮すれば、その妨害に至る経緯、期間、被告の態度などからして、告の精神的苦痛を慰謝するには金五〇〇万円が相当である。

判例時報1713号92頁
判例タイムズ臨時増刊1065号112頁

  • 最終更新:2013-11-11 16:31:36

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード