父親の育児

父親と母親との差は男女の差によるものではないことを証明したフィールドの研究(Field, 1978)は画期的な重要性を持つ。フィールドは、父親の特徴とされてきたものが、母親とは異なる育児責任ひいては育児体験の相違によることを明らかにした。①育児責任を主に担っている第一養育者である父親群と、②(母親が第一養育者で)二番手で育児にかかわる第二養育者である父親群を設定し、その行動を③第一養育者である母親と比較した結果、(中略)育児の第一責任者となっている父親群①の行動は、同じく第一責任者である母親群③と近似しており、二番手の父親群②とは明らかに異なったのである(Field, 1978)。
 この発見は、それまでの父親研究の視点を大きく転換させる契機となった。そして子どもに対する世話も行動も、女性ならではのもの、母親だけに偏った本能などではなく、責任を負って育児する体験の中で育まれるものであると認識を改めることとなったのである。


全面的に育児を引き受けた父親や育休を取った父親は、最初は慣れない育児に翻弄されしごととの両立に苦闘しながら、次第に育児のベテランになっています。そして男性はおっぱいを飲ませること以外、女親にかなわないことは何一つないと明言し、「女親にかなわない」は育児しない男性の言い訳だと異口同音に述べています。そして親になっての発達は母親に匹敵するものになっており、育児体験で体得した、状況を読み臨機応変に対処する力は、しごとに活かされているとも語っています(土提内二〇〇四、田村二〇〇六、大島二〇一一)。


父子家庭の父親の特徴として両性具有性もあげられる。1人で子育てしている父親は、おだやかでやさしい母親的な側面ももちあわせているという(Biblarz & Stacey,2010;橋口,2007)。

父子家庭と母子家庭は、相違点よりも類似点の方が多いとの報告がある(Hilton & Devall,1998; Schnayer & Orr, 1989)。このことは、性役割の偏見を取り除くのに役立つ。父親は、母親のように子どもを育てるモチベーションやスキルが足りない、と思われてきたが、そうではないことがわかる(Hilton & Devall,1998)。


男性は父親になると男性ホルモンが低下し、生物学的に子育てに適応するようになることが、米ノースウエスタン大学が米国科学アカデミー紀要に発表した研究結果で明らかとなった。
(中略)
研究を行ったリー・ゲトラー氏は、テストステロンの数値が高かった男性ほど父親になる確率が高かったが、いったん父親になると、その数値は大幅に減少したと指摘。「父親になり、新生児を迎えることは、多くの精神的・身体的な調整を必要とする。われわれの研究は、男性が生物学的に、そういった必要性に対応しようと実質的に変化しうることを証明した」と語った。

  • 最終更新:2013-12-02 09:25:30

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