片親疎外の有害性

ワラスティンとケリーは離婚家族を対象とする実証研究を行い(1980)、「離婚後の子どもと別居親である父親との頻繁かつ継続的な接触の重要性、特に別居親である父親と良い関係を継続することが、子どもの精神的な健康にとって決定的に重要であることを指摘した」。

「子どもに父親に対する尊敬の念をもたせないようにすることは、子どもたち自身の自尊感情を深く傷つけていく「心理的虐待行為」である。」



ベイカーの研究(2007)では、「子供の頃に別居親との交流を拒絶していた人には、①自己肯定感の低下、②基本的信頼感の低下、③抑うつ傾向、④アルコール/薬物依存傾向、⑤自分自身の離婚、⑥自分自身の子どもからの片親疎外(⑤と⑥は世代間連鎖)、が見られやすい」としている。

アメリカ司法省の定義では、「子どもとの関係を妨害することは情緒的虐待である」。



「別居親と面会交流していない子どもは、『自己肯定感』が低くなり、『親和不全』が高くなることが明らかになった。一方、たとえ親の離婚を経験した子どもであっても、別居親と面会交流を続けている場合、両親のそろっている家族の子どもと比較して『自己肯定感』および『親和不全』の得点に差が出ないことも明らかになった。」
※親和不全・・・「対人的なやりとりにおいて自ら壁を作り、緊張して打ち解けられない傾向や、深く付き合うことを怖れる傾向」、「対人関係に消極的・回避的ない心性」。
引用・参考文献:青木聡(2011)『面会交流の有無と自己肯定感/親和不全の関連について』大正大学カウンセリング研究所紀要 第34号



「面会交流は子の健やかな成長を確保する上で有意義であるなどの観点から、面会交流の実現を支援していく必要がある。」


「子にとっては、夫婦が離婚ないし別居したとしても、その双方ともが親であって、子の健全な成長のためには、子が双方の親から愛情をもって接せられることが、重要なことである。一方の親が子を独占するということは、子の福祉のためにならない。近時、面会交流が重視されるゆえんである。両親ともが子に対して親としての責任を有するわけであるが、その責任の在り方として、子を他方の親と交流させる義務があるといえよう。」
引用・参考文献:松本哲泓(2011)『子の引渡し・監護権者指定に関する最近の裁判例の傾向について』家庭裁判所月報 第63巻第9号



離婚プロセスにおける子どもの適応リスクを緩和させる要因として、有能な監護親の存在と適切な子育て、非監護親との良好な関係、離婚後の両親間対立の減少が挙げられる。なお、共同監護は単独監護と比べ、子どもに対する保護効果が高く、一般的適応、情緒・行動的適応、学業達成度などの面で良いとの見解が示されている(以上、Amato(2010)の整理による。)。
引用・参考文献:武藤隆(2013)『子どもの成長発達をめぐる諸問題(下)』家庭裁判所月報 第65巻第5号

  • 最終更新:2013-10-17 12:12:17

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