面会の回数・内容

 別居親との面会交流との関係で大事な点は、五歳ぐらいまでは記憶のスパンが非常に短いということである。私が傍聴した米国の裁判では、裁判官もこの点を考慮して、面会交流を週二~三回、特に母親が別居親の場合には週四~五回もの頻度で行っていた。記憶から親が消えてしまわないための配慮である。
 日本では、子どもが小さいうちは、監護親である母親の申し出の結果ということもあるが、もう少し大きくなるまで面会交流は待つ、というスタンスを裁判所がとることも多い。別居後に自発的に週一回ぐらいのペースで面会交流していた場合でも、一度離婚が成立して、監護親が渋り出すと、裁判で争ってもなかなか週一回のペースでの面会交流を続けることが難しくなってくる。
 しかし、このような監護親の態度、そしてその立場を尊重する裁判所の態度は、子どもと別居親との絆の形成という視点からみると、取り返しのつかない大きな誤りを犯しているといえる。大きくなってから急に片親と面会交流を始めても、しかも日本の面会交流のように年に数回、外で食事をしたりしながら話をするといった交流では、いつまでたっても、どこかよそよそしい距離のある親子関係しか築けないであろう。



「私は以前出した著書で、離婚後も乳幼児が両親双方と夜を過ごすことの重要性を強調しました。寝る前の手順、子守歌、絵本の読み聞かせ、添い寝、夜間の慰め、そして朝の日課はすべて、親子関係の絆を強くします。」



「離婚は、子どもにとって、この大事な愛着対象と切り離されることであり、社会としてできることはその不安を抑え、トラウマ体験とならないように配慮することである。」
「この混乱の時期に最大の力となるのは、親が、子どもにとって、変わらぬ愛着対象でありつつけることの保障である。だからこそ、面会交流は、すぐに、別居とともに行われなければならない。」

【インディアナ州の「親時間ガイドライン」(2008)】
・1歳から1歳半では、週3回、内1日は休日に10時間以上、後は3時間。プラス、すべての祭日の8時間。そして、子の養育に実際携わったことのある別居親の場合には宿泊面会もする。
・3歳以上では、定期的な面会として、隔週金曜日の夕方6時から日曜の6時まで。プラス平日の週1日、夕食を挟む4時間と、すべての祭日。さらに、長期面会として、4歳までは、年間4回各1週間、5歳以上は、夏休みの半分、プラス学期中は、可能であれば別居親の期間を交替し、平等に分ける。



直接的な交流というレベルで言うと、特に乳幼児にとっては直接的な交流あるいは支えが必要と考えられているから、それは1週間単位で考えるということもあるかもしれない。他方、小学生くらいになってくれば、常に一緒にいるというようなことではないため、きちんとした支えがあれば、1箇月ぐらいの単位で考えるということもあるかもしれない。




子は双方の親と愛着(アタッチメント)を形成することが健全な発達にとって必要であり、非監護親と子との面会交流は、別離を余儀なくされた子が非監護親との関係を形成する重要な機会である。
引用・参考文献:小澤真嗣(2009)『家庭裁判所調査官による「子の福祉」に関する調査 -司法心理学の視点から-』家庭裁判所月報 第61巻11号 P29



このような月2回の面会交流を実施することは、相手方にとっては相当の負担をなる可能性を否定的できないところではあるが、それは、相手方が未成年者を実家に連れ帰ったことにそもそもの原因があって、相手方には、父親としての抗告人の権利にも十分に配慮すべき義務があるから、これを受け入れて実現するよう最大限の努力をすべきである。仮に、相手方においてそのような負担には耐えられないというのであれば、未成年者と抗告人との父子関係に対する配慮に欠けるか、若しくはそのような配慮をするための態勢に欠けることを示すものであるから、いずれにしても未成年者の監護者としての適格性に疑問が生ずることを自覚すべきである。

  • 最終更新:2014-03-29 20:33:11

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