子どもへの影響(学術研究)

「子どもの年齢によって示される心理状態は異なるものの、幼児に共通してみられたのは、退行現象や不安、乱暴な行為の出現であった」(Wallerstein et al, 1975)

「親の離婚から10年が経った際の調査結果として、多くの子どもたちが、たとえ成人しても親が離婚した当時の記憶を鮮明に保っており、悲しみや親への憤り、喪失感を持ち続けていた」(Wallerstein, 1985)

「親の離婚時において子どもが未就学の場合は、初期の2年間は、親が離婚したのは自分のせいではないかという罪悪感、あるいは親から見捨てられ感、乱暴な行為、親が復縁するのではないかという願望がみられた。後期の4年から10年では、男児は学校での問題行動、女児は学業上の問題社会的能力の低下がみられ、男女ともに家族への憧れや空想がみられた。離婚時の年齢が就学した場合は、初期の反応では悲嘆や和解の空想、学業低下、母親へ対する怒りが示された。後期の4年から6年は、男子は集中困難や学業不振、攻撃性、女子は性的関心の強さが認められ、男女ともに無力感や人間関係に期待しない傾向、離婚前の家族への憧れが示された。離婚時の年齢が青年期の場合、初期反応では男女ともに親の離婚の動機についての関心や怒り、抑うつがみられた。後期の4年から6年では、異性への敵対心、親身に世話をしてくれる大人への依存がみられた。 」(Arnold et al, 1990)

「離婚や妻子の不法な遺棄、別居による父親がいない子どもは、最初の2年間、もっともマイナスの影響が現れた。また、男児の方が、父親がいない女児あるいは父親と同居する男児よりも、知的能力が低い」(Santrock, 1972)

「父親が不在の場合の母子関係について、離婚をしていない家族と比べた場合、離婚を経験した母子関係に、争いが絶えない」(Borduin et al, 1987)

「離婚した親自身の対象喪失に対する悲哀の仕事が達成されない場合は、子どもの精神発達に深刻な影響を及ぼす」(渡辺・吉田, 1985)

「親の対象喪失が解決されていない場合は、子どもの精神性的発達の難しさ(性同一性の問題)と対象喪失に伴う親子の葛藤としての愛情剥奪(自立における頼りなさの問題)を導き出せる」(増井, 1986)

「親の離婚が児童の集団内での行動に及ぼすこととして、不安や抑うつ、衝動的な行動、暴力などの攻撃などの陰性の心理的な影響がみられた」(土屋, 1992)






「非離別家庭で育った人たちと比べて、離別家庭で育った人たちは、心理的ウエル・ビイイング、教育程度、職業上のステイタス、生活水準、そして結婚生活の満足度が低く、離婚して単親になる危険性が高く、行動上ならびに健康上もより大きな問題を抱えていた」(Amato, 1994)

「最近の研究報告によれば、離別家庭の子どもは、身体的病気への罹病率が有意に高いと報告されている。1995年に発表された公衆衛生についての報告によれば、幼児期に親の離婚を経験した大人の寿命はそうでない大人に比して短いことも報告されている」






「アマトとケイスによる一三〇〇人以上の子どもが含まれる九二の研究のメタ分析(分析の分析)結果によれば、離別家庭の子どもは非離別家庭の子どもと比べて、平均的にいえば、より多くの問題を抱えており、そのウェル・ビィーイング(身体的・心理的・社会的適応度)は、低いといえます」

「アマトは、子どものときに親の離婚を経験した八万人の成人を対象とする三二の研究を集めてメタ分析も行っています。その結果によれば、平均的にいえば、親の離婚は子どものライフ・コースにまで影響を及ぼしていました。つまり、非離別家庭で育った人たちと比べて、離別家庭で育った人たちは、心理的適応度、教育程度、職業上のステイタス、生活水準、そして結婚生活における満足度などがおしなべて低く、離婚する危険性、あるいは単親になる危険性が高く、行動上も健康上も、より大きな問題を抱えていたと報告されています。」

「親の離婚を経験した一三一人の子どもを対象に二十五年間にわたって追跡調査したワラスティンの研究も同様の報告をしています」

引用・参考文献:棚瀬一代(2012)『離婚と子どものウェル・ビィーイング』教育と医学60(2)





「離婚家庭の子どもが成人すると、学歴や心理的幸福感が低く、自分自身の結婚にも問題を抱えがちであり、両親(特に父親)と疎遠であり、自身も離婚へ至る危険が大きい傾向がある」

「離婚家庭に育った子どもは成人したときに他者と親密な関係を結ぶことに困難を覚えやすい」





「自分のことを「離婚家庭の子ども」と自己定義し、自尊感情は低く否定的な自己像を形成していた。さらに、「自分の親は離婚した」という事実を周囲になかなか打ち明けることが出来ずにおり、隠していることのうしろめたさや、知られることへの不安から交際範囲が狭くなったり、新しいことに挑戦できずにいた。このように、親の離婚は、離婚当初だけでなく、子どもの将来の生活にまで長期にわたって影響を与えることが明らかになった。」



離婚プロセスにおける子どもの適応リスクを緩和させる要因として、有能な監護親の存在と適切な子育て、非監護親との良好な関係、離婚後の両親間対立の減少が挙げられる。なお、共同監護は単独監護と比べ、子どもに対する保護効果が高く、一般的適応、情緒・行動的適応、学業達成度などの面で良いとの見解が示されている(以上、Amato(2010)の整理による。)。
引用・参考文献:無藤隆(2013)『子どもの成長発達をめぐる諸問題(下)』家庭裁判所月報 第65巻5号 P17



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  • 最終更新:2013-09-20 11:54:33

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