子の福祉についての判決文の抜粋

※あくまで抜粋なので、詳細は記載していません。詳しくは原文をあたってください。


社会の基底的集団として、家族は全人格的に付き合うものであって、人はこうした家庭でおよそ成人に至るまでの長期間育成されるものであり、成人して出ていく社会にも社会的法則や倫理を遵守するとかの父性的原理に基くものや思いやりなど他人と共感して生活するなど母性的原理に基くものの双方を必要とし、未成熟の子に対する父親としての役割、母親としての役割を考慮すれば、つぎの時代を担う人間を育成する場として親権は親の権利性をそう強調して論ずべきものではなく、また、子の福祉の観点からその義務性をそう軽々しく論ずべきものではなく、父と母の共同して親権を行うことが最も望ましいのはいうまでもないところである。
(中略)
別居後の調停等の席上、原告から一郎を遠ざけようとする被告の態度(前記一2(二)、(三)、(四))は、社会人として成長した暁には人格として備わっていなくてはならない二つの特性、すなわち、人間の母性原理の他、父性原理を一郎自身が学習すべき絶好の機会を被告自らが摘み取っている態度というべく、決して讃められた態度ではない。
 子供は産まれたときから二親とは別個独立の人格を有し、その者固有の精神的世界を有し、固有の人生を歩むというべく、決して、母親たる被告の所有物ではないのである。
(中略)
被告が原告に対して一郎との面接交渉を拒否したことは、親権が停止されているとはいえ、原告の親としての愛情に基く自然の権利を、子たる一郎の福祉に反する特段の事情もないのに、ことさらに妨害したということかできるのであって、前項で検討した諸事情を考慮すれば、その妨害に至る経緯、期間、被告の態度などからして、告の精神的苦痛を慰謝するには金五〇〇万円が相当である。
(静岡地決平11.12.21 判時1713-92)


既に述べたように、別居した父母であっても、双方がこの養育に関わることは子の福祉にとって重要であり、面会交流は、子が非監護親から愛されていることを確認し、非監護親と交流する機会として、子の健全な成長にとって重要な意義があるもので、これを制限する事情がないのにこれを行わないのは、子の福祉のために好ましくない事情といいうる。
(中略)
このまま相手方の監護を継続することは、
(中略)
抗告人と未成年者との精神的な結びつきを一層希薄にする可能性が多大にあり、未成年者に抗告人による愛を感じつつ成長する機会を奪うもので、その精神的成長に悪影響を与えかねないものである。
(中略)
未成年者の監護者として抗告人を指定し、相手方に未成年者を抗告人に引き渡すように命じることが、未成年者の福祉に適うと認められる。
(大阪高決平21.6.30 家月63・9-38)



相手方は、申立人と未成年者とが面接交渉をすることについて反対の意思を有しており、
(中略)
相手方のかかる態度については、申立人と未成年者との交流を妨げる結果となっており、未成年者が社会性を拡大し、男性性を取得するなどの健全な発育ないし成長に対する不安定要素となっている。
(中略)
相手方を未成年者の監護者と指定し、相手方において引き続き未成年者の監護養育を行うことよりも、未成年者の監護者については、申立人と定めてその下において養育させるのが未成年者の福祉にかなうものと認められる。
(東京家八王子支審平21.1.22 家月61・11-87)



父母が離婚する際に一方の親が親権者又は監護権者と定められ、単独で子を監護養育することになった場合、他方の非監護親の子に対する面会交流は、基本的には、子の健全な育成に有益なものということができるから、これにより子の福祉を害するおそれがあるなど特段の事情がある場合を除き、原則として認められるべきものと解される。
(東京家審平24.6.29 家月65・3-52)



原告による面接交渉の頻度や態様等に係る要求や学校行事への参加が被告の心理的な負担となり,あるいは,被告の感情を害したことが契機となって被告が面接交渉を拒否するに至った経過があるとしても,被告が平成17年×月以降面接交渉を拒絶したことについて,正当な理由があったとはいえないから,被告は,原告に対して,本件合意の不履行について,債務不履行の責任を負うことを免れない。
(中略)
以上のとおり,原告は,被告の本件合意の不履行によって,平成17年×月以降長期間にわたり,本件合意に基づく面接交渉の機会を失い,さらには,上記不履行が一因となって長女に原告との面接交渉に消極的な心理が形成されることによって当面面接交渉が困難な状態となる結果を生じさせることとなったものであるところ,このような事態により,原告は,幼少の年代における長女と交流することにより得られたはずの親としての心理的な満足を得る機会を失い,また,今後も当面は長女と面会して同様の心理的な満足を得ることができない状態となり,我が子に会いたいという思いを日々募らせているものと察することができる。このような損失及び心情を考慮すると,原告の被った精神的な損害は軽微なものとはいえない。
(中略)
被告が本件合意に係る面接交渉を拒絶した行為は,原告の面接交渉権の侵害として不法行為を構成する。しかし,面接交渉権の侵害の観点からみても,前記債務不履行に基づく損害を上回る損害の発生を認めることはできない。
(横浜地決平21.7.8 家月63・3-95)



子と非監護親との面接交渉は、子が非監護親から愛されていることを知る機会として、子の健全な成長にとって重要な意義があるため、面接交渉が制限されるのは、面接交渉することが子の福祉を害すると認められるような例外的な場合に限られる。
(中略)
未成年者が父を知らないまま成長するのに比べて、父を認識し、母だけではなく、父からも愛されてきたことを知ることは、未成年者の心情の成長にとって重要な糧になり、また、父が母国について未成年者に話すことは、未成年者が自己の存在の由来に関わる国について知る重要な機会となる。
(中略)
以上のとおり、相手方は、抗告人に対し、主文第2項の条件で、抗告人と未成年者との面接交渉をさせる義務があると判断する。
(大阪高決平21.1.16 家月61・11-70)



面会交流義務を負う債務者が「正当の理由がないのに」義務の履行をしない場合には,「特別の事情がない限り」,債務者に対し,間接強制として相当な金銭を債権者に支払うべき旨命じることになる。
「正当の理由」とは,「例えば,監護している子が面接交渉権利者である実親に対し,その従前の養育態度などに起因する強い拒否的感情を抱いていて,面接交渉が,子に情緒的混乱を生じさせ,子と監護者実親との生活関係に悪影響を及ぼすなど,子の福祉を害する恐れがあるといった,主として子及び監護親実親の側における,間接強制を不相当とすべき諸事情」をいう。
「特別の事情」とは,「例えば,非監護親実親の面接交渉が,もっぱら監護親実親に対する復縁を目的とするものであるとか,その方法,手段が不適当であるなど,面接交渉が権利の濫用に当たるといった,主として非監護親実親の間における,間接強制を不相当とすべき諸事情」をいう。
(神戸家決平14.8.12 家月56・2-147)



(面会交流は)子の監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方,人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求める子の権利としての性質をも有するものというべきである。
(大阪家審平5.12.22)

  • 最終更新:2014-02-12 05:05:10

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