面会交流の権利・義務

今日では,子育てにかかわる親の権利および義務であると同時に,親の養育を受ける子の権利でもあること,そして両者の利益が対立する場合には,子の利益を第一に考えることについて異論はない。
判例でも,「子の監護義務を全うするために親に認められる権利である側面を有する一方,人格の円満な発達に不可欠な両親の愛育の享受を求める子の権利としての性質をも有するものというべきである」としている(前掲【7】大阪家審平 5・12・22)。

子どもの権利条約9条3項は,「締約国は,児童の最善の利益に反する場合を除くほか,父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する」として,子の立場から父母との交流を子の基本的な権利として定めている。したがって,別居親との交流は,子どもの権利条約で示された子の基本的な権利として位置づけることができる。
私見は,このような子の権利に対応して,別居親には子と交流する義務があり,また面接交渉を子の監護教育義務の一内容として位置づけることから,同居親には子と別居親との交流を保障する義務があると考える。こうした理解は,親権を,子の監護教育をする親の権利とともに,親の義務と構成する現行法(民820条)に対応するものである。

面接交渉は,前述のように親の権利であると同時に子の権利であるが,子の権利としては,監護教育の内容として,子は別居親からも監護教育を受ける権利があり,その交流を通じてこの権利が充たされるのである。離婚後の単独親権者も,別居中の共同親権者も,子の成長発達する権利を保障し,監護教育義務を履行するために,別居親・非監護親と子の交流を確保する義務があり,この義務を適切に履行しない場合には,監護教育義務の不履行として,単独親権の場合には,親権者変更の事由となり,共同親権の場合には,親権者指定あるいは監護者指定の考慮事由となるものと考える。

女性差別撤廃条約5条,子どもの権利条約18条は,子の養育および発達に対する父母の共同責任をうたっている。日本の現行法では,離婚後は単独親権であるが,それは父母の一方が親として適格性がないために他方が親権者になるのではなく,父母の別居により親権の共同行使が事実上困難になるからにすぎない。必要性があれば,親権者の変更もできる構造(民819条6項)の下では,親子間の扶養義務が継続するのと同様に,非親権者も潜在的にはなお親権者であり,離婚後も,子の監護教育に関わる義務があると解釈すべきである。そうしてこそ,前記の条約の規定する父母の共同責任を果たすことができるのである。



  • 最終更新:2013-10-29 13:27:08

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